年金天引きは憲法違反!
国保・後期高齢者医療の保険料を「年金天引き」に対する審査請求の
口頭意見陳述があり請求人と代理人12名で参加しました。
請求人からは少ない年金から天引きされると生活できないと訴えました。
代理人からはなぜ年金天引きが違法なのか問題点を述べました。
反 論 書
2008年9月25日
徳島県後期高齢者医療審査会長 殿
代理人 
平成20年8月20日付けでの   氏が提起した審査請求に対する徳島県後期高齢者医療広域連合長 原秀樹氏からの弁明書について代理人として反論します。
(1)働いても生活保護基準以下のワーキングプアの増加、多くの高齢者が長年苦労してかけてきた年金が生活保護基準以下の年金しか保障されず老後の不安が広がっています。日本の憲法第25条には、「すべての国民に健康で文化的な最低限度の生活を保障する」となっており、憲法第25条からして日本で貧困が広がることはあってはならないことです。貧困や格差の拡大が社会問題になる中で、本来、国や地方自治体は住民の命と安全を守り、貧困の解消に努める義務があります。
(2)生活保護法第1条には、「日本国憲法第25条に規定する理念に基き」また、同法第3条には「この法律で保障される最低生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない」と規定していることから、憲法第25条の国民の最低限(ナショナルミニマム)の具体的基準であることは異論のないことです。生活保護法第57条には、「被保護者は、保護金品を標準として租税その他の公課を課せられることがない」と定められており、税金や保険料(過年度の含めて)の徴収が猶予されます。最低生活費から租税公課を課したり徴収すれば最低生活を脅かすからです。最低賃金や他の社会保障制度からの給付も生活保護基準を目安に設定されています。生活保護以外の制度においても憲法第25条の健康で文化的な生存権を守る観点でも制度設計がなされなければなりません。そうでなければ、貧困を解消すべき国や地方自治体が逆に憲法第25条を踏みにじり貧困を広げる行政となり下がってしまいます。
(3)近年、多重債務者の自己破産の増加が続いていますが、破産法や民事執行法の中で破産者の最低生活を守る観点で生活保護基準に相当する収入については破産処分の対処外になっています。また国税の滞納整理においても「滞納処分をするによってその生活を著しく窮迫させる恐れがあるとき」処分の停止が定められています。租税公課の中で国税は最上位にあり、当然、地方税や保険料(税)にもそれが準用されます。
国民は納税義務を負います。しかし、年金という社会保障給付も憲法第29条の財産権にあたります。4月から始まった後期高齢者医療制度で人の年金を了解もなく天引きすることに国民が大きく反発し政府も振り替え納付に切り替える改善策を出さざるを得なくなりました。国の主人公は国民であり租税公課は国民が自ら納めるのが基本です。
年金天引きは、年金支給という入り口のところでの差し押さえであり、天引き後の最低生活が営めるかどうかが全く考慮されていません。老後の不安の増大は、老後の最低生活を支える年金が保障されていないことにあります。40年間国民年金をかけてもらえるのが月額66000円、現在の平均受給額は46000円です。老後が安心できる年金制度をつくることがまず先ではないでしょうか。5000万件もの消えた年金問題も解決しないまま保険料だけむしりとるやり方に納得がいきません。
(4)国民皆保険を根底で支える国民健康保険法第1条の目的では、社会保障の向上をうたっており、保険料の賦課についても最低生活を脅かさないものでなければならないのに、生活保護基準以下の世帯にも払えない保険料が賦課されています。
国や地方自治体に公共の福祉守り、保険財政の健全化を図る目的があるとしても、憲法第25条からして、生活を困窮に至らせる天引きは憲法第25条に違反します。年金からの天引きの線引きが生活保護基準からはるか下の設定で年間で18万円(月額1万5千円)という極めて低い線引きであり、最低生活保障が全く考慮されていません。後期高齢者や介護保険でも1万5千円以下で後期と介護保険料の合算額より年金の方が少なく天引きできない普通徴収義務者が約2割もあります。最低生活を営む年金制度が確立していないのに、最低生活費に満たない年金からも天引きすることは生存権侵害につながります。年金天引きは差し押さえにも相当し、天引きを決める際には、本人の同意を得るとともに、最低生活を侵害しないかどうかを事前に判断すべきです。
介護保険料と後期高齢者医療保険料・国民健康保険料(税)の年金からの天引きは、国は年金制度が老後を支える充分な社会保障制度とはなっていないことを充分承知しているはずです。少ない年金者から滞納が発生しないことだけ考えて年金天引きを考えたのではないでしょうか。生活に困窮した場合に対応する生活保護制度での高齢者世帯の増加、高齢者世帯が大半を占める現状はそのことを裏付けています。高齢者の貧困を改善して下さい。不備な年金制度を改善し、差しあたっては最低生活の年金からの天引きは憲法第25条及び第29条に違反ですのでやめて下さい。以上の趣旨から処分の取り消しを求めます。
以上

inserted by FC2 system